2026年労基法改正で「何が変わるか」──主な改正ポイント

歯科医院のような「クリニック」「小規模医療機関」において、 労働基準法(以下「労基法」)が予定している 2026年改正は、経営・運営のしかたや人事・シフト管理にかなりの影響を及ぼす可能性があります。以下、ご自身のような歯科医院が押さえておきたいポイントを、「何が変わるか」と「どんな影響が考えられるか」に分けて、できるだけ分かりやすく整理します。改正案で現在議論されている主な論点は次の通りです。
- 連続勤務の上限規制
→ 14日以上の連続勤務を禁止。つまり、13日連続が実質的な限度に。 - 勤務間インターバル(休息時間)の義務化
→ 終業から次の勤務まで「一定時間」の休息確保が義務に。報告例では「11時間」などが想定されているものも。 - 法定休日の明確な特定義務
→ どの日が“法定休日”かを就業規則等で明記する必要。これまで“週1日は休み”などの曖昧な運用だった事業所は見直しに。 - 残業代・休日出勤の割増や、有給休暇の賃金計算方式の統一(通常賃金方式など)
→ 有給時の賃金計算方式の見直しなど、賃金まわりの制度も整理される予定。 - 「特例」(例:週44時間労働の特例など)の見直し/廃止
→ 医療機関や小規模事業所で使われてきた「ゆるやかな労働時間管理」の枠組みが縮小される見込み。 - 副業・兼業者への割増賃金算定ルールの見直し
→ パート・アルバイト、非常勤、業務委託者など、複雑な雇用形態が混在する場合の賃金算定ルールの明確化。
歯科医院(クリニック)への具体的な影響 — なぜ「直撃する可能性が高いか」
なぜ特に歯科医院など小規模クリニックがこの改正で影響を受けやすいか、主に以下のような理由があります。
- 小規模で人手が少ない
→ 歯科医院などでは、常勤医師・衛生士・受付など限られたスタッフで回しているところが多く、シフトの余地が少ない。
→ 連続勤務禁止やインターバル義務が導入されると、これまで普通にできていた「夜間診療」「土曜・日曜診療」「当直」などが構造的に難しくなる可能性。 - 勤務パターンの見直しが必要
→ 今まで「この人は常勤」「この人は非常勤」「この人はパート/アルバイト/業務委託」など混合で雇っていた場合、労働時間管理・割増賃金・有給管理などが一層複雑になる。 - 人件費が上がる可能性
→ 割増賃金の支払い、シフトの追加、スタッフ増員などで人件費が増える可能性大。実際にあるコンサルでは「夜間診療の時間短縮」「予約枠の効率化」「事務作業のDX化/外注化」などを挙げている。 - 就業規則・契約書の見直しが必要
→ 法定休日の特定、インターバル遵守、副業・兼業の明確化など、書面でのルール整備が必須。今まで“ゆるく運用”していた場合には大きな見直しになる。 - 予約・診療体制の見直し、経営効率の改善が必要
→ 長時間診療や急な時間外対応を減らすため、予約管理の強化、診療フローの改善、スタッフの役割整理などを進める必要がある。
結果として、「今までと同じやり方」で診療を続けるのは難しくなる歯科医院が多い — という見通しです。特に夜間診療や土曜診療など、”回転力”で患者をさばいてきたクリニックは、大きな構造改革を迫られる可能性があります。
歯科医院として「今から準備すべきこと」
改正が確定・施行される前から、以下のような準備や見直しをはじめておくと、ダメージを減らしやすくなります。
- 就業規則・雇用契約書の見直し
→ 法定休日の明確化、勤務間インターバルの遵守、副業・兼業ルール、割増賃金の扱いなどを規定。 - 勤怠管理の仕組みの導入/強化
→ 紙や感覚管理ではなく、タイムカードや電子勤怠、シフト表や労働時間の自動集計ツールなど、客観的・正確な記録が取れるように。 - シフト・診療体制の再設計
→ 夜間診療や休日診療の縮小、診療時間の見直し、スタッフの役割分担など、「無理な長時間労働」に頼らない仕組み作り。 - 診療の効率化・業務改善
→ 予約管理、事務作業の外注やDX化、業務マニュアル整備、人員配置の見直しなど、生産性向上と労働環境改善の両立。 - 人員計画の再検討
→ 今後患者数や診療形態を維持するためには、スタッフ数を増やす必要があるか再検討する。
歯科医院にとっての「チャンス」と「リスク」
デンプロ株式会社では求人サイト「DEN-PRO」を運営しており、働きやすい職場環境の整った歯科医院の求人は求職者から人気となっています。
- チャンス
- 法改正を機に働きやすい職場づくりを進めれば、スタッフの定着率向上や人材確保につながる。
- 無理な夜間対応や過重労働を減らすことで、ミスの抑制・医療の質維持につながる可能性。
- 業務改善・DX化を進めることで、経営の効率化・長期的な持続可能性を高められる。
- リスク
- 人件費や体制づくりコストが増えることで経営圧迫が起きる可能性。
- これまで通りの診療体制を維持できず、患者サービスや収益に影響が出る可能性。
- スタッフの増員、シフト管理、規則整備など、準備コストと手間が想像以上に大きい可能性。
2026年の労働基準法改正では、連続勤務の上限や勤務間インターバルの確保、休日の明確化など「働き方のルール」が強化されます。歯科医院でもシフト管理の精度向上が求められ、無理のない勤務体制が必須になります。これにより、働きやすい職場へのニーズがさらに高まるため、採用では「休息確保」「明確な勤務ルール」「健全な労務管理」を示すことが重要です。法改正へしっかり対応する医院は、スタッフから選ばれる職場になります。

